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デーボ

rishikesh


数か月前に、某所でチラリとデーボの話をしたところ、ご興味をもってくださった方々がいたので、じゃあそのうちブログに書くね、と約束したまま、ほったらかしになっていた。


なので、どういう話の流れになるかわからないけれども、筆の(タイピングの?)おもむくまま、書いてみる。



そう言えば、タイムリーなことに、きのうデーボと電話で話した。


デーボは、この2年ほどビザ問題で足止めを食らい、アメリカのホームタウンで暮らしていたのだけれど、念願叶ってついに先週末、インドへ「帰った」。


デーボにとっては、リシケシ郊外の山奥にあるアシュラムが心の故郷なのだ。


彼女がアメリカにいるあいだ、わたしたちの時間は昼夜真逆であったので、連絡はワッツアップのテキストメッセージかボイスメッセージだったけれど、インドとならば時差もさほどなく、電話しやすい。


わたしが電話したとき、彼女はリシケシの街中で生活雑貨の買い出し中だった。

山の中にいるより、街中にいるときのほうが電波が良いので、好都合だった。


「久しぶりのインドはどう?」と訊くと、「アシュラムはピースフルで最高。でも、インドはどこもかしこも、人混みがすごくて、うるさいし、くさい」と言う。


くさい……?

わたしは少し訝しんだ。「リシケシでさえも?」

「リシケシもなのよ」とデーボ。



リシケシをご存じない人のために説明すると、インドのガンジス川上流域にある、有名なヨガの町だ。

ガンジス川の両岸に、ヒンズー教の寺院やヨガのアシュラムが立ち並ぶ。

昨今はすっかり観光地になってしまったけれど、インドの聖地のひとつでもある。


わたしも二度に渡り長期で滞在したことがあり、なつかしい思い出の町だ。



デーボの「心の故郷」は、彼女のグルジのいるアシュラムで、リシケシからさらにガンジス川を遡った山の中にある。

(グルジ……「グル(師)」に、親しみのこもった敬称「ジー」を付けた呼び方。)


デーボと出会う前、わたしたちの共通の友人Rから聞いた話では、グルジのアシュラムは、一見さんお断り、関係者の紹介なくして訪れることのできない場所とのことだった。


グルジはもともとは、リシケシの少し下流にあるハリドワールという街(ここも有名な聖地だ)の、いちばん大きな寺院のいちばん偉い聖職者であったが、あるとき俗世のしがらみから離れたいと思い(聖地の寺院だって、俗世なのだ!)、ガンジスのさらに上流の山の中の、打ち捨てられて住む人のいなくなった廃村に移った。


そのとき、彼の弟子やら信徒たちもそこに住みついたので、小さな集落ができ、アシュラムと呼ばれるようになったという。


そのアシュラムには、インド人のほか、Rのような外国人も出入りしていたが、Rによると、そこに出家者のように常駐している白人女性がふたりおり、彼女たちはプージャ(祭祀)をする神官のような務めに従事していたという。


そのひとりがデーボだった。


つづく。






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